吸血鬼ヒロインに萌える……感想:白米良「ありふれた職業で世界最強」

ありふれた職業で世界最強 1 (オーバーラップ文庫)

「ありふれた職業で世界最強」は、突如異世界転生した最弱の主人公が、「地球に帰りたい」という想いを胸にどんどん強くなっていく、いわゆる異世界転生モノのライトノベルだ。

魅力的なヒロインと出会い、その世界でも規格外の能力を発揮していく様はまさしく「チーレム」なのだが、本作品の大きな特長は、その規格外の能力を得るまでの過程にある。

主人公のハジメは、オタクとして馬鹿にされ、スクールカーストでも底辺を生きていた。それが突如として異世界に召喚され、さぞかし高い能力を付与されるかと思えば、そんなことはなく。

ステータスは軒並み「10」と一般人並。しかし、他のクラスのメンバー達はみんな1000以上のチートスキルを持っている。そしてハジメは、とある事故がきっかけで、訓練場所だった迷宮から”奈落”へと落下してしまう。

クラスメイトの誰もが「ハジメは死んだ」と思っていたが、そうではない。実は彼は生きていた。しかも、”奈落”において生きるための超絶なスキルを身につけながら――。

超絶なスキルを身に着けたハジメはとにかく強い。そして何より信念がある。その信念は三つ。

「地球に帰ること」「愛する者を守ること」「その邪魔をする者は容赦なく殺すこと」

この信念は長い作品の中で終始一貫しており、揺らぐことがない。それ故か、この作品には全体を流れる安定感のようなものが確かに存在している。

第一巻では、ハジメが奈落に落ち、いかに絶望し、そして生きる術を身につけたかが描かれる。Amazonのレビューでも「気持ち悪い」と言われているだけあり、その内容は決して気持ちのよいものばかりではない。

だがそれでもあえて言いたいのは、この作品は「吸血鬼ヒロイン」に萌える作品だということだ。なぜ吸血鬼ヒロイン萌えなのか、それは一巻を読んで確かめてほしい。

ちなみにこの作品、Web版では完結しているので、放置の多いこのジャンルでは非常に珍しいともいえる。完結しているというだけでも読む気が起きる人は少なくないはずだ。

管理人の評価

総合評価
この本の総合評価。他の項目との平均点ではなく、それ以外の要素も加味して採点。
3.5点
キャラへの共感
登場人物にどのぐらい共感できるか、感情移入してストーリーを追えるか
3.5点
可愛い・かっこいい
女性キャラは可愛く、男性キャラはかっこいいなど、キャラが魅力的に描かれているか
4.5点
わかりやすい
わかりやすいストーリーをか、または複雑なストーリーでも理解しやすい書き方になっているか
3点
興味深い出来事
作中で起きる出来事・イベントが興味深く、ストーリーを引っ張っているか
3点
読みやすさ
漢字・ひらがな・句読点・会話文・地の文のバランスがとれた読みやすい文章になっているか
3点
文章表現・会話
比喩等のレトリックが適切に使われ、会話文にユーモアがあるか、情景描写などが丁寧か
2.5点
ここから先はネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

感想・あらすじ(ネタバレあり)

角砂糖を吐くほど甘ったるい恋と、内臓を吐き出すほど凄絶な殺し合いが同居する、ザ・厨二病ラノベがこれだ。

「この世の問題の九割は暴力で解決できる」と、ハウリア族のカムが言っていたが、まさにこの言葉こそ、この作品の本質を示していると言っても良い。とにかく面倒くさがりなハジメは、ところどころで「物語のお決まり」をスキップし、実力行使で結論を出す。そんな部分に痛快さを感じる人も多いのではなかろうか。

一方で、この作品は作家デビューで出版されたものではなく、あくまで作者が趣味で投稿していた作品の書籍化である。それ故か、ところどころで読みづらい箇所なども存在する。

特に、作者が設定厨なので兵器や魔術に関してはかなりの文量を割いて記述されている部分は大きい。また、バトル部分の描写が長く、読み飛ばしたくなる人もいるかもしれない。その割には情景描写が微妙に足りず、特に異世界におけるビジュアルイメージを浮かべるのに苦労する場合もあるかもしれない。

この辺りは読み手によって向き不向きがあると思うが、そもそも作者自身も「結構適当です」と言っているので、あまり深く読み込もうとしなければ問題ない。アクション映画のようなものだと思えばいい。

とにかく強い主人公がヒロインたちとイチャイチャする話だと思って読み進めていくのが、この作品の正しい楽しみ方であると思う。

この作品において、ハジメは「世界最強の錬成師(?)」として描かれる。錬成師というよりはもはや歩く兵器なのだが、とにかくハジメの活躍は目覚ましい。まさに「なろう小説」の極致とも言える作品で、最初から最後までブレずに最強を発揮しつづける。

管理人は書籍で1~5巻を買い、続きはWebで最終話まで読んだが、とにかく主人公の発想と強さが桁違いで、それを維持したままゴールできるのは素直に凄いと感じた。

ヒロインたちとしっかりセックスしてしまっている部分も、商業流通のラノベではなかなか見かけない描写なのでそのあたりも新鮮だ。

というより、ユエが反則級に可愛いのでそこでノックアウトされた読者も多いのではなかろうか。少なくとも私はそうだった。吸血鬼ヒロインの時点でお腹いっぱいなのに、魔法最強で物分りがいいとか最高じゃないですか。ご都合主義どんと来いです。

……とにかく、あまり深く考えずに読んで爽快感を得られる作品なのは間違いない。後日談も充実しているので、書籍を読んで興味を持った方はぜひWeb版のほうも覗いてみてほしい。

 

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